モロッコ マラケシュの美宿、リヤド・エニヤ(2)
2009-09-16


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今日もJ-WAVEのホームページ|に掲載の写真について。下から3枚目のイスの写真です。上記ホームページ内の「BON BOYAGE」の「BACK NUMBER」から2009.9.04.の「モロッコ マラケシュ」をクリックすると番組の内容もご覧いただけます。

このイスは、私の著書『美食と雑貨と美肌の王国 魅惑のモロッコ』|の表紙の写真に写っているイスで、2009.9.11のブログでもご紹介した美しいリヤド(古い邸宅を改装したホテル)の、リヤド・エニヤ|の中庭に置いてあるイスです。洋書の表紙に、偶然にも同じイスの写真が使われていて驚いたことがあります。それほどモロッコらしい配色なのです。ピンクとグリーンといった補色が、モロッコでは、何の違和感もなくインテリアとして溶け込んでしまうのですね。私がモロッコに惚れ込んでしまったのは、そんな美意識があるからでもあるのです。

この写真を撮るために、私は約2時間もかけてしまいました。なぜ2時間もかかったか不思議に思われるかもしれません。それはこんな理由からです。まず、左右対称の写真にしたいと思いました。1人で取材していたので、イスと小物、背景をすべて左右対称にするのに30分以上かかってしまいました。三脚にセットしたカメラのファインダーを覗いては少しイスを動かし、またファインダーを覗いては小物を動かし、布の位置を直し……、そんなことを何度繰り返したことか(笑)。実は古い建物を使っているリヤドの柱や壁の柄は左右対称でなかったりするので、左右対称にするのは大変な作業なんです。

被写体の位置が決まったところで撮影です。ご覧の通り、正面に窓があるので、普通に撮影すると自分がうつってしまいます。中央の窓枠に三脚が隠れるようにセットして、リモートシャッターを持ってしゃがんでシャッターを切ります。そんな屈伸運動を数回繰り返しては、縦にしたり、横にしたり、アングルを変えてみたりしてひととおり撮影。次に、同じ中庭にあった他のイスに入れ替えて同じように撮影します。最終的にイスを3パターンほど替えて撮影しました。

そんなことを繰り返していると、私が撮影していた窓のある部屋の中から女性が出てきました。「ここで撮影していてもいい?」と聞くと、笑顔で「構わないわよ」とのお返事。再び撮影していると、私の傍らでパソコンに向かっているムッシュが。ふと目が合った瞬間、彼は、「僕は邪魔になってない?」と聞いてくれました。「いえ全然! こちらこそ、落ち着かなくてごめんなさいね」などと、周りの方達が心配してくださるほど熱中していました(笑)。

2時間の間にはこんなことも起きました。あるとき気がつくと、窓の中にミネラルウォーターの大きなペットボトルが! 最初にはなかったはずなのに、中にいたゲストが窓の内側に置いたんですね。「いったいいつから……」。でも、そこがデジタルカメラのいいところ。モニターで撮影済みの写真を確認すると、ペットボトルが写り込んでいる写真はそれほど点数が多くはありません。そこで、ルームメイドの女性にお願いして、部屋の中に入ってもらって、ペットボトルを動かしてもらいました。そんな苦労の末、納得の1枚が撮影できたのです。

この写真は、シャッターチャンスが1回しかないような、瞬間をとらえた写真とはまったく違います。モロッコの美意識を、さらに完璧なものにするために時間をかけました。でも、また同じ場所に行っても同じ写真は撮れないかも知れないということでは同じです。イスが色褪せているかもしれませんし、カーテンが変わっているかもしれません。実際、取材前に見た同じ場所の写真に写っていた赤いソファはもうありませんでした。

どんな写真でも、やっぱり一期一会なんですね。

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たかせ藍沙

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